Co-isiwaraについて

Co-ishiwaraについて Co-ishiwaraについて

小石原焼・髙取焼の新しい陶器ブランド「Co-ishiwara」

「Co-ishiwara(こ・いしわら)」は、日本有数の作陶地である福岡県東峰村で350年以上続く
小石原焼と高取焼が新しく立ち上げる共同の陶器ブランドです。
このブランドは小石原ならではのテーマを元に構築されたベース・デザインに、
小石原地区の44窯(2022年2月現在)それぞれの個性と技術を掛け合わせ、
百年後の暮らしにも生きる陶器を提案するものです。

半農半陶の産業をヒントに

半農半陶の産業をヒントに

小石原地区では古くから「半農半陶」が営まれ、現在でもその一部が継承されています。「半農半陶」は地区の産業としてまたは個々人の営みのことだけ小石原焼・高取焼のでなく、この土地での作陶方法を指す言葉でもあります。小石原地区では、作陶に小石原の土を使い続けてきました。さらに釉薬の原料となる灰も、小石原で収穫された稲の籾殻や藁を燃したもの。そして小石原の土と釉薬から生まれた碗によそわれるのはもちろん、小石原のお米で炊いたご飯。

受け継がれた産業と暮らしの融合

受け継がれた産業と暮らしの融合

ここ小石原には、地産地消で産業と暮らしが融合する構造が何百年も存在しそして今なおそれが受け継がれているのです。そこには、これからの暮らしを考えるヒントがあるようにも思えます。
小石原地区が持つ作陶地としての歴史的背景、そして産業と暮らしが融合する特有の構造。ここに小石原だからできること、小石原だから見えること、があるように思えてなりません。

七窯元による新たな始動

七窯元による新たな始動

今回、小石原焼陶器協同組合の七窯元が「Co-ishiwara」の第一シリーズ「小石原百碗」の制作に挑戦しました。
これからのシリーズでは他の作陶家も続々と加わり、新たな挑戦を仕掛けて行きます。同じベース・デザインで作陶家が個性をぶつけ合い、百年後の暮らしをも彩る陶芸ブランドを育てて参ります。これからの「Co-ishiwara」にご期待ください。

小石原ブランドプロジェクトリーダー太田富隆(マルワ窯)

太田富隆(マルワ窯)

小石原焼、髙取焼 統括リーダーとして未来の小石原焼、髙取焼を担う事業、東峰コーディネーター事業がスタートして3年が経ちました。
各三部会に分けてそれぞれ小石原の職人たちが月数回これからの小石原焼について話し合いを進めてまいりました。伝統産業会館、道の駅の改修、ブランドの立ち上げなど、内容の濃い話し合いを行いました。
その結果、今回の入れ子茶碗も、形になり東京で展示されることとなり、自分としても、リーダーとして誇りに思います。
これから先、この事業で行ってきたことが次世代に繋がって発展していけるように願っております。

プロジェクト監修

小石原ブランドプロジェクト監修・多摩美術大学教授外舘 和子

外舘 和子

ベース・デザインから広がるCo-ishiwara

現在44軒が制作に取り組んでいる福岡県のやきもの小石原焼の新しいブランドを監修して欲しいとの依頼を受けたのは、2021年4月の事である。その後、コロナ禍の状況を見つつ、日本一美しい村と言われる東峰村の小石原で作家たちと研究会を重ねていく事となった。既にこの村へは、福島善三氏の仕事場をはじめ度々訪れていたが、改めて小石原の窯元を巡り、制作しているものを見せてもらった。
ろくろ成形に飛び鉋や刷毛目などの装飾技法を特徴とする小石原焼は、後発の小鹿田焼に影響を与えたが、産地のやきものとしては小鹿田焼の方が知られているかもしれない。

外舘 和子

しかし、小鹿田焼のいかにも民芸調のどっしりとした大らかなイメージに比べ、小石原焼は軽やかでモダンな印象がある。それが小石原の潜在力ではないか。重要無形文化財保持者・福島善三氏もいわばその象徴的な存在である。
デザイナーの選定に際し、陶器の産地に、敢えて磁器の作家・田上知之介氏を選んだのは、そうした小石原のポテンシャルを読み込んだ故である。土物の軽やかさや現代性を潜在力とする小石原焼の魅力をより明確に引き出したい。磁器のデザイナーと小石原の土物作家のコラボレーションは優れた化学反応を起こすのではないか。これまで様々な産地を見てきた私にとって、それが一つの試みであった。

外舘 和子

ただし、小石原の作り手たちは皆、やきものを生業とする窯元の一員であると同時に、一人一人が陶芸の個人作家でもある。昨今見かけるような、流行のデザイナーと、その気晴らしに付き合う職人といったような関係性は、断じて避けたい。そこでベース・デザインという、筆者としては新しい概念を提案した。通常、デザインとはデザイナーの形と模様に基づき、全く同じものを工場などで量産するが、今回のベース・デザインという考え方は、デザイナーの形態を理解した上で各自のろくろ技術を用いて成形し、それぞれ得意な装飾を施す。裏印は共通ブランドロゴと作家の印を両方入れる。
今回、カラクリワークスがシンプルにして印象的なロゴを作成してくれた。

外舘 和子

アイテムは東峰村でとれる米を家族で美味しく食べるための飯碗である。家族の成長にあわせ、幼児から大人まで使える飯碗の五客セット。子が生まれた家庭へのギフトにもすべく、木箱入りである。桐箱ではなく、敢えて杉材の箱としたのは、巨大な「行者杉」が東峰村のシンボルだからである。
最初の試作の際、まずは田上氏の石膏モデルのフォルムに注文を付けた。一つ一つが美しいだけでなく、重ねた状態も魅せる形であって欲しい。美しくないことを機能のせいにするデザイナーを、私は認めない。田上氏は再度石膏原型を調整し、小石原の作家たちは、そのフォルムを受け止め、解釈し、各自の高度なろくろ技術と装飾技法で五点セットを作り始めた。一回目の試作から回を追ってブラッシュアップし、最終的に決め手となる幼児向けの最も小さな碗の、やや内に入る口縁がポイントとなった。

外舘 和子

皆で(Co-)創り上げていく「Co-ishiwara(こ・いしわら)」を示す直線と○のロゴは線の太さがポイントである。グラフィックの美だけでなく、土の立体感が関係するからである。田上氏、カラクリワークス、なにより実材で形にする小石原の作家達の技術とセンスを駆使した細部の調整により、小石原ブランドの百碗が誕生した。今回7名がスタートさせたが、今後、小石原焼四十四軒が、新ブランドをさらに拡張・発展させていくことを願ってやまない。
その拡がりが出てきた時、この小石原新ブランド創設プロジェクトは、成功したと言えるであろう。【了】

プロジェクトデザイン

小石原ブランドプロジェクトデザイン・陶磁器デザイナー・愛知県立芸術大学准教授田上 知之介

田上 知之介

「小石原らしさ」

小石原を訪れた時、「何もしなくていい」と思った。美しい自然に包まれ民藝の里は、ゆったりと丁寧な暮らしが営まれ、豊かで満たされているように感じられた。何より、デザイナーが入ることによって、地域の人たちがつくりあげてきた大切な暮らしの歩調を壊してしまう危険性があると感じたからである。
しかし、取材した資料に何度も目を通しディスカッションを重ねていく中で、デザインの正しい関わり方がありそうだと考えるようになった。小石原は、変化することを受け入れ、挑戦し続けてきた産地である。そのことの是非はともかく、それもまた「小石原らしさ」ではないか。そうして350年以上もの間、陶磁器の産地として継続してきたのだ。

田上 知之介

私はモノのデザインを通して、産地の人たちがより「自分らしく」生きられるように小石原焼高取焼の未来の方向性を示していく必要があると考えた。そして以下の想い窯元の皆さんと共有した上で、デザインワークを進めた。

  • 百年という時間軸で考えて
  • 無理をしていないか
  • 暮らしの歩調を壊していないか
  • 誠実で美しい仕事になっているか
  • 小石原らしいものになっているか
  • その取り組みは産地として美しいか
田上 知之介

今回、ご飯茶碗をプロジェクトブランド初のアイテムとして選択したのは、小石原の記号になると考えたからである。地域の山々から採れる土、山の傾斜を活かした棚田、稲藁を灰にしてつくられる釉薬、今も残る半農半陶の暮らしなど、ご飯茶碗は小石原の豊かな自然と暮らしを象徴している。5種のサイズ・フォルムからなるご飯茶碗は、乳幼児から大人まで使えるものとしてデザインした。
子供の成長や進学、結婚、出産など、家族構成や暮らし方は常に変化する。ご飯茶碗を銘々に持つ文化がある日本人にとって、器は家族の数だけ物語がある特別な存在といえる。フォルムは、ろくろ成形(手づくり)だからこそ可能となるアウトラインを意識しながら、つぼみが花開くような成長のイメージで構成した。

田上 知之介

器を使用する年齢や手の大きさ、様々な使用シーンを想定して器(見込みと高台)のサイズを決定している。また、この取り組みに対する責任誠実な仕事の証として、ブランドロゴと各窯元の双方を裏印としてクレジットすることにした。各窯元は、小石原の伝統、窯元の特長、窯元の創造という3つのテーマを基に制作に臨み、百種を超える飯碗「小石原百碗」が完成した。
さらに、今後の展開として「型おこし」による変形もののプレートを提案している。型成形によってバラツキを抑え、安価で安定した製品を提供するという生産方法は小石原には合わない。小石原の技と生産規模を考慮しながら、型成形でしかできない造形で、魅力ある器を制作していかなければならない。

田上 知之介

そのためには、型成形=量産=安価という概念を捨て、これまでの小石原に無かったかたちを、手間を掛けた丁寧な仕事で創作する必要がある。全ては、産地(小石原焼・高取焼)が理想的な未来に向かうためである。
小石原の雄大な「行者杉」の年輪からイメージしたプレートの造形は、それぞれ縦・横の比率がサイズよって異なる。五種類の形状とサイズは、今日の多様化した食生活のあらゆるシーンに対応できるベーシックな器を目指している。このシンプルな造形に小石原の加飾技術が加わることで、和・洋・中どんな料理も違和感無く使うことができるだろう。また、産地に「型おこし」による優れた技術が加わることで、製品アイテムのバリエーションを増やし、ろくろ成形による器との相乗効果をもたらすと考えている。

田上 知之介

私は、今回立ち上げたブランド、「Co-ishiwara」を未来の人たちに誇れる仕事として、産地の皆さんが少しずつ育てながら百年続けて欲しいと理想を描いている。そしてその時に大切なことは、自分たちの暮らしの歩調を壊さないこと、無理をしないこと。さらに、各窯元は「窯元らしく」、産地としては「小石原らしく」あるかどうかについて、いつも判断しながら誠実な仕事をすること。そしてそのことの積み重ねが、産地(小石原焼・高取焼)のオリジナリティと永く愛されるものづくりにつながると考えている。【了】